製造業のDXが注目される理由とは? DX実現に向けた課題と取組み事例

製造業のDXが注目される理由とは? DX実現に向けた課題と取組み事例

国際情勢や経済動向などが目まぐるしく変わる現代。ものづくりを担う製造業では、コロナ禍での不確実性の高まりも加わって、売り上げや営業利益が減少傾向にあると報告されています。

このような予測が困難な事業環境の変化に対応して、製造業が市場での優位性を確保していくためには、デジタル化・データ連携によってビジネスモデルを変革するDXの取組みが重要です。

製造業の企業のなかには、DXの必要性を感じているものの「どのような課題があるのだろう」「どう取組めばよいのだろう」と、具体的な施策まで検討できていないケースもあるのではないでしょうか。

この記事では、製造業のDXが注目されている理由をはじめ、実現に向けた課題と取組み例について解説します。


目次[非表示]

  1. 1.製造業のDXが注目される理由
  2. 2.製造業のDXを進めるうえでの課題
    1. 2.1.IT人材の不足
    2. 2.2.既存システムの老朽化・複雑化・技術的負債化
  3. 3.製造業DXの取組み事例
    1. 3.1.①IT人材の育成
    2. 3.2.②ITシステムの導入
    3. 3.3.③デジタルマーケティングの実施
  4. 4.まとめ


製造業のDXが注目される理由

経済産業省では『令和3年度 ものづくり基盤技術の振興施策』において、製造業におけるDXの取組みを推進しています。

国内の製造業は、新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)の感染拡大をはじめ、さまざまな社会情勢の影響を受けて、業況が悪化しています。事業に対する主な影響としては、原材料価格の高騰や半導体不足などが挙げられています。

このような社会情勢や経済動向の変化・発生は、事前に想定することは困難です。先行き不透明な状況のなか、製造業が事業環境の変化に柔軟に対応していくには、DXによるデジタル化・データ連携によってビジネスモデルを変革させる必要があります。

IT投資による重点課題としては、これまで“働き方改革”“社内コミュニケーション強化”が中心でした。それが、“ビジネスモデルの変革”へと移行している結果が見られます。


▼IT投資で解決したい経営課題

IT投資で解決したい経営課題

画像引用元:経済産業省『令和3年度 ものづくり基盤技術の振興施策


このような結果を踏まえると、経営者層においてDXの取組み意識が高まっていることがうかがえます。

出典:経済産業省『令和3年度 ものづくり基盤技術の振興施策



製造業のDXを進めるうえでの課題

製造業におけるDXの取組みは、多くの企業で未着手、または一部の部門にとどまっており、十分に進んでいるとはいえない状況です。

DXが進まない課題には、IT人材の不足と既存システムの老朽化・複雑化・技術的負債化が挙げられます。


IT人材の不足

製造業でのDX課題として、IT人材の量・質ともに不足していることが挙げられます。

経済産業省の『令和3年度 ものづくり基盤技術の振興施策』によると、製造業におけるIT人材の不足感は、2020年には量・質ともに約40%に達しています。


▼IT人材の不足感

IT人材の不足感

画像引用元:経済産業省『令和3年度 ものづくり基盤技術の振興施策


DXを実現するためには、製造現場でのデジタル技術活用に向けて、人材育成や能力開発の取組みが求められます。

出典:経済産業省『令和3年度 ものづくり基盤技術の振興施策』『2021年9月 製造業を巡る動向と今後の課題


既存システムの老朽化・複雑化・技術的負債化

製造現場にある既存システムの老朽化・複雑化・技術的負債化は、DXによるデジタル化・データ連携を進めるうえでの課題となっています。

製造業には、以下の2つの連鎖構造が存在します。


▼製造業の連鎖構造

  1. エンジニアリングチェーン:企画研究・製品設計・工程設計・生産
  2. サプライチェーン:受発注・生産管理・生産・流通販売


各部門において、設備機器やシステムの老朽化・複雑化・技術的負債化が進んでいる場合は、横断的なデジタル化・データ連携ができません。

DXを進めるには、このような関係部門・チェーン全体でデータ連携を行うためにデジタル技術を活用することが必要です。

出典:経済産業省『2020年6月 製造業を巡る動向と今後の課題』『2021年9月 製造業を巡る動向と今後の課題



製造業DXの取組み事例

ここからは、製造業の人手不足や既存システムの課題を解消して、DXを進めるための具体的な取組み事例を紹介します。


①IT人材の育成

既存人材をIT人材化するために、研修や教育訓練を実施して育成を図っている事例について紹介します。

重工業を事業としているメーカーでは、DXによるデジタル変革を進める人材として、中途採用ではなく、自社製品・技術の知識がある既存人材の育成を中心に行っています。また、デジタル人材育成プログラムを実施して、継続的な人材育成を図っています。

社内公募やさまざまな部門出身者を集めて組織の多様化を図ることで、部門単体で行うよりも多様なアイデアが生まれ、よい風土醸成につながると期待できます。


②ITシステムの導入

情報通信機器の製造を行う電機メーカーでは、ITシステムを導入して、エンジニアリングチェーンのデジタル化・データ連携を図っています。

工場ごとに異なっていた生産管理システム(ERP:Enterprise Resources Planning)を統合して、生産データの連携を行うことで、工場間のデータ統合、人材・技術の交流を促しました。

これにより、人手不足に対応した負荷分散や、多品種少量生産ニーズの取込み、外部環境の変化に対応しやすい生産体制を構築しています。


③デジタルマーケティングの実施

DXによるデジタル化・データ連携によって取得した情報を用いて、マーケティング活動に役立てることも可能です。

輸送用機器や産業用ロボットなどの製造を行うメーカーでは、製造プロセスでのデータ収集・活用を行っています。

生産管理のシステム化・センサーの導入によって、生産データの収集・分析、ナレッジの共有を行い、ニーズの把握や商品開発に活用しています。

このように、デジタル技術を活用してターゲットに合わせた商品展開を行うことで、消費者にとって価値のあるものづくりを目指しています。



まとめ

この記事では、製造業のDXについて、以下の項目で解説しました。


  • 製造業のDXが注目される理由
  • DXを進めるうえでの課題
  • DXの取組み事例


製造業のDXを進めるうえで、IT人材の不足や、既存システムの老朽化・技術的負債化などが課題となっています。

これらの課題を解決するには、IT人材の育成や、ITシステム・センサーなどを導入して、データ連携ができる体制を構築することが重要です。

また、システム化やデータ連携によって収集した情報は、デジタルマーケティングに役立てることも有効です。データの収集方法としては、製造現場に限らず、顧客接点の場となるオンライン展示会もおすすめです。

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沖田
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